【あっぱれ!福祉の視点で語るニュージーランドの教育】
4月。
ニュージーランド(以下NZ)教育の深く広き懐により、自閉症児Fくんの留学生活が始まりました。
(ここまでのお話はこちら↓をご参照ください)
ニュージーランド移民もびっくり!~「えっ? 自閉症児が海外留学?」(1)
有償ボランティアから「ティーチャーエイド(補助教師)」に成り上がった私も、約20年ぶりに学校に通う生活を送ることとなり、Fくんと私、二人三脚の高校生活のスタートです。
本日は、そんな二人が送るニュージーランドライフの教育風景をご紹介しましょう。
■ 特別な支援を必要とする生徒とは……
一般に、NZの教育現場にて障害児を語る場合、「しょうがいじ」という表現を使わず「スチューデント ウィズ スペシャルニーズ(以下SWS)」と呼びます。
それは文字通り「特別な援助を必要とする生徒」という意味を持ちますが、
注目すべきは、日本で言う「障害児のみ」を指す言葉ではないということ。
なぜなら、
「特別な援助を必要とする生徒」=「知的障害児および身体不自由児」とは限らない
からです。
読み書きが苦手なので補習したい、
学校にない教科を特別に勉強したい、
教室の雰囲気になじめないのである授業の時のみ個別に学習したい、
外国から移住してきたばかりで英語がわからない、
通信教育の教材を使って特別に補習したい、
などなど、
あらゆるニーズをもった生徒を指してSWSと表現するのです。
初めてこの言葉を耳にした時、
私は、障害児をSWSと表現するだけで、「しょうがい」という言葉が持つネガティブな印象がサラリと払拭されることに驚きました。
さらに、
「どんなニーズを抱えていようとも、彼らに対して差別はあってはならない。
学校は、そのニーズに応えるべく姿勢を怠ってはいけない」
とする暗黙のポリシーが掲げられていることに、強い感銘を受けました。
■ ハンディーキャップの定義
さらに!
「ハンディーキャップ」いう言葉がありますが、この語彙も私が抱いていた意と異なっていました。
障害=ハンディーキャップでしょ? と思ってる方?
違うんですよ。
この学校の校長 Mr Aがこう諭してくれましたので、ここでシェアいたしましょう。
(以下、校長Mr Aの言葉を引用)
「あるニーズを抱いている状態に対して環境が即していない場合に、ハンディーキャップがある、と表現します。
たとえば、ある生徒が車いすで学校に通っているとしましょう。
◆ 残念ながらその学校には段差が多くしかも2階建て。にもかかわらずエレベーターがない場合
→ 彼にとってハンディーキャップがある、と言うことができます。
◆ 一方、バリアフリーでエレベーターがあり、彼の学校生活になんら不都合がない場合
→ たとえ彼が障害者であっても、この学校内にハンディーキャップという言葉は存在しません。
この違い、わかりますか?」
(校長Mr Aの言葉の引用ここまで)
「なるほど……。しょうがいはひとつの状態を表すに過ぎない言葉であるということなのですね」……と私。
しょうがい、スペシャルニーズ、ハンディーキャップ……教育現場でこうした語彙のひとつひとつをこだわって使い分けるNZ教育。
しょうがいじをスペシャルニーズのある生徒と呼ぶことで、福祉の対象はぐんと広義となり、障害者は特殊な人といった偏見を抱かせない『技』がここにはあります。
そして、ハンディーキャップのない環境を整えるということが、決して障害者だけのためではない、われわれすべての暮らしから生まれるニーズに応えるべきものなのだという確固たる福祉姿勢に、
あっぱれ! ニュージーランド! と私は叫んだのであります。
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さぁ、Fくん、そんな環境で高校生活を送っています。
次回は、彼の教室についてレポートしましょうね。
(つづく)